棗は抹茶を入れる茶道における大事な茶器の一つです。茶器は棗一つとってもいろいろな種類があり、なにがなんだかわからないと思います。今回は棗の基本的な知識と種類などについてご紹介します。
棗とは
まずは棗そのものについてご説明します。 茶道具における棗は抹茶を入れる容器のことです。その中でも薄茶用の茶器として使用されることから、薄茶器、薄器と呼ばれることもあります。
棗という呼び方の由来は果実のナツメに形が似ているというところからきているのが一番有力です。
棗の大きさ
棗は大きさによって3つの種類に分かれます。 大中小とそのまま ・大棗 ・中棗 ・小棗 と呼びます。大きさの違いを表にまとめました。
| 大棗 | 中棗 | 小棗 |
大きさ | 二寸六分半 (約8cm) | 二寸二分 (約6.6cm) | 一寸六分半 (約5.0cm) |
使い道 | 薄茶専用茶器 | 薄茶、濃茶兼用茶器 | 濃茶用茶器 |
大棗と中棗に関しては大きさの規格が厳密に決められているので、どれもおおよそのサイズは同じになります。しかし、小棗に関しては厳密な決まりはないので大きいのから小さいのまで一つ一つ大きさに違いがあります。
棗の種類・形
ご紹介している果実のナツメに形が似ているという棗(利休形)が基本の形になりますが、それ以外にいろいろな種類の形のものがあります。
そのなかでも目にすることが多い中次形についてご紹介します。
・真中次 円筒状の形をしており中央部分に合口があります。 仕服をかけると濃茶用としても使用することができます。
・面中次 真中次の蓋の部分を面取りしたものになります。
・茶桶 面中次の蓋を浅くしたものになります。
・雪吹 茶桶の身の裾の部分も面取りしたものなります。 吹雪でなく雪吹と逆に表記するのには意味があり、見た目通り天と地がわからないという遊び心からきているようです。
棗の塗り
棗は木製で無地で黒塗、それも真塗りというものがメジャーでした。真塗りとは漆の下から透けずに木目が見えない塗りのことを言います。
しかし、時代に合わせて塗り色や装飾など様々なものが用いられ多様化が進みました。そのなかでもよく目にする塗り、装飾をご紹介します。
溜塗(ためぬり)
棗の木地に朱色の下地を塗り、上から半透明の透き漆を塗って仕上げたものです。溜塗は使用しながら時間がたつにつれて、下地の朱色が顔をのぞかせてくる変化を楽しむことができます。
一閑張
木の枠組みに和紙を張り、乾燥を行い、形が整った後に枠組みを外し、和紙に漆や柿渋を塗ったものです。細かい装飾や彩りも豊富です。 中国の飛来一閑(ひきいっかん)という方が日本に亡命した際に広めた技術と言われており、名前の由来にもなっています。
蒔絵
漆を使った装飾方法の一つで塗り終わった本体に漆で絵付けや色付けをし、金粉や銀粉を蒔いて描く技法です。 蒔絵のほかにも漆を使った技法として沈金、螺鈿などがありますが蒔絵が施されているものが一番メジャーです。
棗の見どころは合口にアリ!
棗は上記でもご紹介した通り、木と漆で作られています。棗の形に木地を挽き、その上から何回も漆を塗り完成させます。
工程としてはおおまかにこの2つになるのですが、良い棗の判断は合口がピッタリと合うことです。全ての手作業の技術がそこに集約されているといっても過言ではありません。
茶道の中では、使用している道具を拝見させて頂けるのですが、合口のピッタリあった棗に出会うと茶道をしている方は心が浮き立つ感動をします。
棗の扱いについて
抹茶は温度や湿度によってはカビてしまうものなので、使用後は中の抹茶をすべて出し、柔らかい布で拭くようにしましょう。塗り物なので、水洗いは避けるようにして下さい。
面倒に感じるお手入れですが、道具を大事にすることで、日ごろのお茶の席でのおもてなしの心に繋がると思います。
まとめ
抹茶の保存のことも考えて、棗を選ぶ際はまず合口がピッタリと合うものを第一に選ぶようにしましょう。その上で好みの色合いや装飾を見つけて下さい。 棗の値段はピンキリですが決して値段だけで判断せず、茶器について勉強をする姿勢を保ちいい茶器を揃えてください。
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