和食を食べるとに、気を付けなければならないマナーがたくさんあります。自宅ではあまり気にしていない方も多いと思いますが、お店では恥をかかないようにしっかりマナーを身に着けておきましょう。今回は、一般的な食事会で出る会席料理のマナーを中心に紹介していきます。
お膳の定位置
まずは、食事の基本としてお膳に並ぶ料理の位置を覚えておきましょう。「右手にお箸、左手にお茶碗を持つ」ことを基本として、料理が並べられています。
お膳の配置について詳しく知りたい方は「お膳で食事を出すときや普段の食事での器の配置を解説」をご覧ください。
おしぼりの正しい使い方
おしぼりの正しい使い方には3つの手順があります。 ・右手で取り上げ左手に持ち替える ・開いて両手を拭く ・拭いた部分を内側にしてたたんで元の場所へ置く
一般的におしぼりは「手を清めるもの」です。手を拭く以外に使ってはいけません。テーブルを拭いたり、男性に多くみられる顔を拭いたりするのもマナー違反です。
懐紙の使い方
懐紙を持っていると口元の汚れを拭き取るのに便利です。懐紙とは、二つ折りの小さな和紙のことです。
グラスについてしまった口紅は、指で口紅の跡を拭ったあと口紅の付いた指を懐紙で拭き取ります。
汁気の多い料理を食べるときに受け皿の代わりにも使えます。どうしても箸で一口サイズに切れない場合に懐紙で口元を隠して噛みきる、口から魚の骨や果物の種を出すときに口元を懐紙で隠す、食べ残しを隠すなど、和食の席で役立ちます。
箸のマナー
和食をいただく際に箸のマナーは大切です。使い方次第で周りの方を不快にさせてしまうので、正しい箸の使い方をしっかりと覚えましょう。
割り箸の割り方
割り箸は水平に持ち、膝の上で上下に割りましょう。割り箸を垂直に持って左右に割ると、隣の人に肘や腕が当たってしまうことがあります。
箸の取り上げ方
箸の取り上げ方は4つの手順で行います。
・右手で箸の真ん中を持つ ・左手で箸の下を支え、箸の下まで右手を横に滑らせるように移動させる ・右手を返し、箸の1/3辺りを持つ ・左手を箸から外し、正しく箸を持つ お箸を正しく取り上げられるようになったら、箸の置き方もマスターしておきましょう。 箸の置き方について「箸置きには正しい置き方が存在している!」をご覧ください。
お箸のNGマナー
楽しく食事の時間を過ごせるようにするために、箸のマナー違反に注意しましょう。箸のNGマナーを紹介しますので、一度自分の箸の使い方を確認してみてください。
もぎ箸 | 箸に付いた食べ物を口で舐めること |
指し箸 | 箸で人のことを指すこと |
ねぶり箸 | 箸先を口に入れて舐めること |
渡し箸 | 箸置きの代わりに茶碗やお皿の上に箸を置いて、箸を休めること |
迷い箸 | どの料理を食べようか、器の上をあちこち迷うこと |
握り箸(持ち箸) | 箸を握りしめて持ったまま、手で器を持つこと |
刺し箸 | 食べ物に箸を突き刺して食べること |
探り箸 | 器の中の食べ物を、箸で混ぜて探ること |
返し箸 | 箸を逆さに持って、持ち手側で食べ物を取ること |
箸渡し(移し箸) | お箸とお箸で食べ物を移すこと 火葬の場で死者の骨を拾う際に同じ動作で箸を持つこと |
そら箸 | 食べ物を箸で取った後、食べずにお皿に戻すこと |
寄せ箸 | 箸使って自分の方に料理を引き寄せること |
たて箸 | 箸をご飯に突き刺して立てること 死者の枕元に供える枕ごはんと同様にすること |
涙箸箸 | 先から料理の汁をたらすこと |
叩き箸 | 食器を箸で叩くこと |
かきこみ箸 | 器を口につけて箸でかきこむように料理を食べること |
蓋つきの椀の扱い方
お吸い物などの蓋つきの器は、目上の人が先に開けてから自分の蓋を開けるのがマナーです。
蓋の開け方、マナーについて詳しく知りたい方は「お料理で蓋つきのお椀がでてきたときのマナーってどうするの?」をご覧ください。
会席料理のマナーと食べる順番
会席料理では、料理が出された順番に食べていきます。
・先付け ・吸物 ・向付け ・焼き物 ・煮物 ・揚げ物 ・蒸し物、酢の物 ・ごはん、止め椀、香の物 ・水菓子、甘味
の順に料理が出されます。
次の料理が運ばれてきたときに、今の料理を食べきっていなくても焦る必要はありません。一度運ばれてきた料理に箸を付けてから、残っている料理をいただきましょう。
先付け
先付けとは前菜のことです。椀や小鉢は持ち上げて、平皿は置いたまま食べてください。 串ものは、箸で食べ物を押さえながら串を引き抜きましょう。お皿の向こう側へ抜いたを置きます。
吸物
吸物は、すまし汁が多いですが季節によっては土瓶蒸しが出ることもあります。まずは箸を置いたまま一口だけ汁を飲みます。
蓋つきのお椀は、上記で紹介しているマナーに沿って扱いましょう。
向付け
向付けとはお刺身のことです。向付けは手前から、淡白な魚、貝、脂身のある魚が順に盛り付けられています。手前の淡白な魚から盛り付けを崩さないようにいただきましょう。
お造りの下に「つま」や「けん」が敷かれています。お刺身と一緒に食べられますが、残しても問題ありません。 小皿に醤油を入れて、お刺身を醤油につけて小皿を受け皿にしていただきます。わさびは醤油に溶かしてもマナー違反にはなりません。
焼き物
和食のコースでは、焼き物がメインとなります。焼き物は、尾頭付きや切り身の魚、ホタテやエビなど、魚介類の焼き物です。焼き物は左側から食べ進めていきましょう。
尾頭付きの魚やエビに殻がついているときは、手を使って食べてもマナー違反にはなりません。
煮物
煮物は煮物茶碗で出されます。煮物も蓋つきの器で出されることがほとんどです。小さい器の場合は左手で持って食べましょう。大きめの器の場合は膳に置いたままいただきます。煮汁を落とさないように蓋か懐紙で受けます。
揚げ物
揚げ物は天ぷらのことです。向付けと同じように、手前のものから盛り付けを崩さないように食べましょう。薬味を入れた天つゆに天ぷらを浸けたら、つゆが垂れないように天つゆの器を持っていただきます。
蒸し物、酢の物
蒸し物は茶碗蒸しのことです。蒸し物は蓋つきの器で出されます。汁気の多い酢の物は、器を両手で持ち、右手で箸を持ってから汁が垂れないようにいただきます。お箸で摘まみにくいもずくなどが出てきたときは、器に口をつけても大丈夫です。食べるときに音を立てないようにだけ気をつけましょう。
ごはん、止め椀、香の物
止め椀はお味噌汁、香の物は漬物のことです。ごはん、止め椀、香の物が出されるとコースは締めくくりです。お酒はストップして、冷めないうちにいただきます。
ご飯のおかわりをいただくときは、茶碗を両手で持って店員さんに渡してください。受け取ったおかわりのご飯は一度膳に置いてから、改めて茶碗を持っていだだきます。
水菓子、甘味
コースの最後にデザートが出されます。和菓子と抹茶が出されたときはまず和菓子からいただきます。フルーツの場合は、切り目が入っているなら右側から順に食べましょう。
お酒の飲み方
日本料理を食べる時のお酒について、ビールと日本酒の飲み方を紹介します。
ビール
ビールは夏季だと4~6度、冬季は6~8度に冷やしてあります。ビールの泡が立たなくなってしまうため、キンキンに冷やすのは禁物です。 ビールを注ぐときは、グラスの中を飲み干してからにします。ビールがちょっとでも少なくなったからとすぐに注ぎ足すのは、マナー違反になります。
お酒を飲めない人は、乾杯する最初の一杯は注いで、グラスに口を付けて飲む真似をしましょう。
日本酒
お酌をするときは、徳利の胴の部分を持ちます。手の甲が上に見えるように傾けて注ぎ、反対の手は添えるようにして支えます。 女性はなるべく両手で杯を持って飲むとキレイに飲めます。
お酌をするために立って歩きまわったり、空いている徳利を倒しておくのは見た目が悪いのでやめましょう。
やってしまいがちなマナー違反
マナー違反だと知らずにやってしまいがちなよくある事例を紹介します。恥ずかしい思いをしないように、確認していきましょう。
手皿を添える
料理を食べるときに、箸を持っていない方の手を添えながら食べる「手皿」は、上品に見えるかもしれませんが、マナー違反です。料理を口に運ぶ際に、汁が垂れて手が汚れてしまうのは、見た目がよくありません。
「箸先五分、長くて一寸」という言葉があるように、なるべく箸先だけを使う意識をすると、口に運ぶ料理は自然と少なくなり、手皿を添えなくても箸からこぼれることはありません。汁気の多い料理やどうしても気になる場合は、蓋を受け皿代わりに使うか懐紙を添えましょう。
一つのお皿の物ばかり食べる
同じようなタイミングで2品以上の料理が運ばれてきたときに、最初のお皿の料理をすべて食べ終わってから次の料理に手を付けるのも、実はマナー違反です。キレイな食べ方に見えますが、一つの料理ばかり食べずに交互に食べ進めていきましょう。
とくに、ごはんと止め椀、香の物は一緒に出てくるので、交互に食べることを意識してください。香の物はご飯の上に乗せないように気を付けましょう。
食べ終わった器を重ねる
食べ終わった器を、片付けやすいように重ねたり食事の邪魔にならないように重ねたりするのもマナー違反です。 食器は傷つきやすいので、そのままにしておきましょう。蓋つきの器は元に戻してください。
魚をひっくり返す
焼き物に出てくる魚料理、表の身を食べた後にひっくり返して裏の身を食べてしまうのは、マナー違反です。 表の身を食べたら、手間がかかって面倒ですが、骨を外してからひっくり返さずに裏の身を食べましょう。
和室でのマナー
和食は、和室でいただく機会が多いです。最近は和室がない家庭も少なくありません。和室のマナーを知らない方も基本的なマナーは覚えておきましょう。
和室での席順
基本的に出入り口に遠い席は上座、出入り口に近い席は下座になります。洋室であっても出入り口に遠い席は上座、近い席は下座です。
敷居や畳の縁を踏まない
昔の畳は、身分によって縁に入っている模様や柄が決められていました。身分が高い人の家では畳の縁に家紋を入れていたそうです。相手を重んじるという意味があり、畳の縁は踏んではいけません。敷居を踏むことは、相手の家をないがしろにするという意味があるので、どちらも踏まないように注意しましょう。
座布団には勝手に座らない
勝手に席に座ってはいけません。すすめられた席の位置に座りましょう。 まずは座布団の下座に正座をします。挨拶をした後、食事に招待してくれた相手に席をすすめられるまで待ちます。
座布団は定位置です。座布団を好きな位置に動かすのはマナー違反になります。
靴下やストッキングで入室する
素足で和室に上がるのはマナー違反です。必ず靴下かストッキングをはきましょう。食事のお誘いを受けたときは、靴下かストッキングをはいて行くと安心です。
まとめ
和食のマナーを紹介しましたが、他にも和食には食べ物によって食べ方のマナーがあります。心がければ簡単にできるマナーですが、気にしすぎるとせっかくの食事が楽しめません。最低限のマナーとして、周りの人を不快にさせないように気を付けて美味しい食事を楽しんでください。
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