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沈金とは何か?歴史から製作工程までわかりやすく解説!



漆器の装飾技法には様々なものがありますが、中でも有名なのが沈金です。沈金とは、あらかじめ漆器の表面を掘って、そこに金を沈める方法です。

沈金はもともと中国を発祥とする装飾技法ですが、日本で大きな発展をとげました。この記事では、沈金についてわかりやすく解説します。


沈金で様々な模様が作れる

沈金は、塗り終わった漆器の表面に、先のとがったノミ(沈金刀)で絵を彫り、そこに金を流し込む装飾技法です。黒漆もしくは彩漆(いろうるし)塗りの上から、模様を彫刀で線上に浅く彫り、生漆を摺り込み、金箔を流し込みます。


漆が乾燥した後に、はみ出ている金箔を拭い取ることで、文様部分にだけ金銭が残り、美しい模様をあらわれるようになります。


漆は接着剤の代わりとなり、漆と金が強くくっつくので、彫刻を施した部分だけ金が沈むという特性を活かして様々な模様が表現されます。まるで漆黒の漆の中に金が沈んでいるように見えることから、沈金と呼ばれるようになったと言われています。


なお、金箔の代わりに、銀を用いた場合は「沈銀」、黒漆を用いた場合には「沈黒」と呼ばれますが、プラチナや顔料などを用いることもあります。


沈金の歴史

沈金の起源は、中国の「鎗金」(そうきん)と呼ばれる技法にあると考えられています。鎗金は宋の時代(618~1279年)に始まり、明の時代(1368~1644年)の初め頃に最も発達した装飾技法であると言われています。


中国の鎗金が日本に伝わったのは、今から700年ほど前の南北朝時代、漆塗りの経典箱に鎗金が施されたものが現存しています。沈金の技法が日本に広く普及したのは室町時代にまで遡ることができます。


輪島は日本で有名な沈金の産地

江戸時代以降は、能登の輪島でも沈金が行われるようになりました。 現在、石川県輪島市や沖縄本島が沈金の産地として有名です。

最も沈金が盛んなのは石川県輪島で、明治・大正・昭和にかけて輪島では多くの沈金の名工が誕生しました。伝統工芸品としても引き継がれています。


日本の沈金は現在世界でも最も盛んに行われており、ノミを押して深く漆を擦り込む技術の高さは世界的に高く評価されています。


輪島の気候は湿気が多かったことから、上塗り漆を重ねることができた上に、金沢は日本一の金箔の産地でもあります。堅牢な下地を作る技術と、良質な漆が採取できる環境に恵まれていたことが輪島で沈金の技術が発展した理由です。


日本で最も有名な漆器である輪島塗にも、もちろん沈金という装飾技法が用いられています。


沈金の製作工程

沈金の作品は多くの工程を経て完成します。沈金は厳密に言えば様々な方法がありますが、代表的な沈金の製作工程を説明します。

以下では、沈金の製作工程について詳しく解説していきましょう。


1.下絵工程

下絵工程では、漆器のかたちをした型紙に、下絵を描いていきます。熟練の職人となると、筆で直接漆器に描いていく場合もあります。


2.置目工程

置目工程とは、漆器に下絵を転写する工程です。


3.素彫り工程

沈金は点や線を描いて模様とします。沈金は彫ったときの溝によって模様を浮かび上がらせる装飾技法です。比較的単純な点と線を複雑に組み合わせることによって、独特の魅力が生まれます。


沈金の彫り方には、線・点・擦り・片切り彫り、という4種類の技法がありあます。

ノミで文様の輪郭線を彫ることは文様彫りと呼ばれ、細かな線を彫ることは仕上げ彫りと呼ばれます。様々な種類の沈金刀を使い、下絵にそって線や点を彫っていきます。

同じ金を使っていても金粉を蒔きつける「蒔絵」と呼ばれる装飾技法とは違う印象となります。


なお、素彫りしただけで何も埋め込まない場合は、沈金とは呼ばれず「素彫り」と呼ばれます。


4.漆の摺り込み

次に、彫った部分に漆を刷り込んでいきます。はみ出した漆は紙で拭き取っていきます。


5.箔置工程

彫った部分に漆を刷り込んだ後は、箔置工程に入ります。箔置工程では、摺り込んだ漆のくぼみに金箔や金の粉を沈めていきます。


6.乾燥工程

漆に金箔を定着させるために漆に湿め風呂の中で適切な湿気を与えながら、漆を乾燥させていくのが乾燥工程の特徴です。漆は乾燥するまでに時間がかかるので、慎重さが求められる工程です。


7.仕上げ工程

最後に、余分な金箔や金の粉を履き落として、漆を塗り込んだ後、さらに乾燥させていきます。


まとめ

沈金は、漆器に対して目にも鮮やかな金色が映え、漆のしとやかさと金の豪華さが魅力です。沈金は輪島塗に代表されるように、漆器の装飾技法して発展してきましたが、最近では、万年筆や箸の装飾に使われることもあります。沈金が施されている漆器を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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