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漆のなかでも珍しい白色の漆について


漆といえば黒や朱色を思い浮かべると思います。しかし最近では、青・緑・ピンクなどカラフルな色も出せるようになりました。 今回はいろんな色のなかでも珍しい白色の漆についてご紹介します。


漆で真っ白な色は作れない

漆の色は、一般的に朱色と黒色が多いです。黒色以外の色は原液に顔料を混ぜて作られています。


漆の原液は、あめ色のような透き通った茶色です。そこに様々な色の顔料を混ぜて色漆を作りますが、もともとの原料が透き通った茶色のため、どんな顔料を混ぜても淡い色を作ることができません。


茶色がかった原液に白い顔料を混ぜるので、もちろん真っ白な色も作れません。ベージュやミルクティー色のような色になります。初めて白漆の器を見る人は、ほとんどの人がその色を「白」と表現しないと思います。


柔らかで落ち着いた色合いが白漆の魅力の一つです。また、白漆を作るのは難しく、顔料の混ぜ方や塗り方、乾燥する環境で色合いが異なるのも白漆の魅力のです。


白漆の歴史

日本では縄文時代から、漆が器や祭祀の時の道具に使われていました。しかし、白漆が開発されたのは大正時代からで意外と歴史は浅いです。


朱色と黒色だけしかなかった漆ですが、静岡工業試験場で漆と白粉を混ぜ合わせた白漆が開発されました。白漆を作る技術を身につけるため、全国各地にある漆器の産地の人々が静岡に出向いたそうです。


現在では、白漆の顔料に亜鉛花やチタンが使われています。他にもいろいろな顔料が開発され、色取り取りの色漆が出来ました。


時間が経つと色が変化する

白漆の色が変化すると聞くと、白色から黒っぽくなっていくと多くの人が想像すると思います。ですが、白漆は時間が経つとより白く変化するのが特徴です。


漆の原液と白い顔料を混ぜて上塗りした直後は、茶色の色味が勝って表れます。時間が経過するとともにだんだんと白くなっていき、色が馴染んでベージュのような色になります。


白漆以外の朱色や黒色の漆も同じように色が変化していきますが、白漆と比べると変化は目立ちにくいです。


色が変化していくのは自然の塗料の特徴なので、全く同じ色をもう一つ作るのは難しいです。一度にまとめて作成するなどの工夫が必要なので、白漆は職人さん泣かせの色です。


まとめ

漆器は黒や朱色が主流の器ですが、様々なライフスタイルが確立した現代では、それぞれに合わせたデザイン、色、形の漆器づくりが求めらるようになっています。 白漆のような新しい感覚の漆器を使って、少しでも食事の時間を楽しんでいただけたら幸いです。

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