日本古来からある漆ですが、その美しさとは裏腹に、触るとかぶれてしまうという側面もあります。 なぜ、漆器は触ってもかぶれないのに漆を直接触るとかぶれてしまうのか?
その理由とかぶれた際の対処法について紹介します。
漆がかぶれる理由とは
なぜ漆を触るとかぶれてしまうかというと、漆の原料となる樹液にウルシオールという成分が含まれているからです。
ウルシオール自体に毒性はありませんが人体とは合わず、直接接触することでアレルギー反応を起こしてしまい、結果として痒みと炎症を引き起こしてしまいます。 医学的には「漆性皮膚炎」ともいわれ、大体4日~2週間ほど痒みが続いてしまう他、症状が重くなると全身に症状が広がる厄介なアレルギー症状です。
アレルギー症状は個人差がありますので大丈夫な人もいますが、漆を扱う際はゴム手袋を使用するなど、しっかり対策をするようにしてください。
乾くことでかぶれなくなる
ウルシオールによるアレルギー症状は、「皮膚から浸透して体内に取り入れることで発症」します。
そのため、浸透しない乾いた漆ならかぶれてしまうことはありません。
漆器や木工細工などでは漆を艶出しに使用していますが、しっかり乾燥している為、漆かぶれに心配はないのです。
ただ、乾いたと思ってもかぶれてしまうこともあります。
漆の内面が完全には乾いておらず、乾いていない漆が揮発することでかぶれてしまうからです。 販売されている漆器などはそのような心配はありませんが、自作する際などではかぶれに注意してください。
漆かぶれの対処法
漆かぶれの対処法について「米国皮膚科学会」は以下の対処法を発表しています。
1:接触した部位の皮膚を直ちにぬるま湯と石鹸で洗う 2:接触時に着用していた衣服を全て洗う 3:ウルシ油が付着したと思われるものを全て洗う 4:発疹をかかない 5:水泡を破らない 6:コロイドオートミールやベーキングソーダを加えたぬるめの風呂、または低温のシャワーを短時間浴びる 7:掻痒にはカーマインローション、軽度であればヒドロコルチゾンを塗り、冷水で湿布する 8:掻痒の軽減には抗ヒスタミン剤を服用する、局所抗ヒスタミン剤は発疹や掻痒を悪化させる可能性があるので使わない
石鹸とぬるま湯で洗う
漆が皮膚に付いたら石鹸でしっかり洗います。 漆は油を含んでいるた、水だけでは落ちないからです。
しっかり石鹸を泡立てて、優しく患部を洗いましょう。
石鹸以外にも、塩水や灰汁などで洗うと良いという話も聞きますが、沁みたり用意が大変だったりしますのであまりお勧めはしません。
また、服やものなどに付着した場合は、付着したものも洗います。 付着した場所を再び触ってかぶれてしまうのを防ぐため、皮膚と同じように石鹸や洗剤で丸洗いする必要があるのです。
発疹や水泡をかかない
漆かぶれによって発疹や水ぶくれが生じても、絶対に弄らないでください。 弄ることでウルシオールは広がり、症状も広がってしまうからです。
また、掻きむしることで皮膚が荒れてしまいますので、怪我しないためにもかかないでください。 どうしても我慢できないようでしたら、氷で冷やし感覚を鈍らせて対処するといいでしょう。
薬や重曹を使う
漆かぶれに対して。お勧めされている成分があります。 コロイドオートミールとはオーク麦のこと、ベーキングソーダとは重曹のことで、ぬるま湯に入れて入浴することで、それぞれ皮膚に潤いを持たせて痒みを和らげてくれます。
カーマインローションやヒドロコルチゾンは、肌の炎症や痒みを抑える効能があります。
カーマインローションの方は日焼けなどにも効果があり、普段使いもしやすいです。
ただ、ヒドロコルチゾンの方はステロイド剤ですので、安全のため医者の診断を受けるようにしましょう。
抗ヒスタミン剤の服用と局所抗ヒスタミン剤の使用
抗ヒスタミン剤の服用とは花粉症の薬などです。 花粉症もアレルギー症状の一種ですので、抗ヒスタミン剤を服用することで漆かぶれのアレルギー症状を抑える作用が期待できます。
ですが、かゆみ止めなどの局所に使用する抗ヒスタミン剤は、逆に症状が悪化する可能性があるため、使用してはいけません。
また、どちらの場合でも体質によって体に負担がかかる場合もありますので、使用する際は医者の診断を仰ぐようにしましょう。
漆を使う日本文化
かぶれが大変な漆ではありますが、日本では昔から漆器や木工細工などで漆を使用しています。 ウルシノキやヤマウルシなどのウルシ科の樹液を集め、ろ過や遠心分離などの加工をした後に鉄分を加えることで黒漆となります。
漆を陶器などに塗ることで、艶出しや防腐、防虫加工などを行ってきたのです。 縄文時代から使用されてきた漆加工は、近年に至るまで、長く日本文化の一部として受け継がれています。
職人は漆かぶれをしない
職人が漆かぶれをしない理由は、漆に対して抗体を持っているからです。 漆かぶれはアレルギー症状ですので、抗体があればアレルギー症状も生じません。
「慣れ」ともいいますが、漆や漆器を作り続けることで抗体を作り、それによって、職人は漆かぶれをしないのです。
ただ、「新人は漆を舐めて重度のかぶれを生じさせ抗体を作る」などの伝統があるほど、簡単に抗体ができるものではありません。 個人差はありますが、漆かぶれに慣れることは止めておいた方が良いでしょう。
まとめ
漆を触るとかぶれていしまう理由は、漆に含まれるウルシオールが原因でした。
直接触ることでアレルギー反応を起こし、それによってかぶれてしまうのです。 漆かぶれは対処法が存在しますが、人によっては対処法では間に合わない場合もあります。
安全のためにも、できるだけ漆や、原料となるウルシ科の植物を直接触れたりしないようにしてください。
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