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茶碗の高台とは?—器の美しさと機能を支える縁の下の力持ち

茶碗を手に取ったとき、底の部分にある輪のような台座に気づいたことはありませんか?高台(こうだい)と呼ばれ、茶碗や湯呑みなどの和食器に欠かせない構造の一つです。目立たない存在ではありますが高台は茶碗の使い心地や美しさを左右する、実はとても重要な部分なのです。今回は、高台の役割や意味、種類について詳しく解説します。


高台の役割とは?

高台は茶碗の使いやすさ・見た目・実用性に関わる、いくつもの役割を担っています。


持ちやすさと熱の伝わりにくさ

茶碗に高台があることで、器と手の間に空間ができ、熱々のご飯やお茶をよそう際でも指先が直接熱に触れにくくなります。また、高台をつかんで持ち上げることで、自然と手が器の底にフィットし、安定感のある持ち方ができます。


器を安定させるための土台

高台は茶碗をしっかりと立たせるための「足」としての役割も果たします。高台がきちんとついていないと、器がぐらついてしまったり安定せず使いづらくなったりします。


デザイン性とバランスの演出

高台の高さや形状は、器全体のフォルムに影響を与えます。高台があることで茶碗のフォルムが引き締まり、上品で美しいシルエットになります。特に抹茶碗などの茶道具では、高台の形状にまで美意識が込められています。


制作過程での実用性

陶器を窯で焼く際、高台の部分だけを釉薬(うわぐすり)をかけずに素焼きのままにすることがあります。焼成中に器が窯の中で棚板にくっつかないようにするための工夫です。高台がなければ、器全体に釉薬をかけることが難しくなります。


高台の種類と見分け方

高台にはさまざまな形があり、それぞれに用途や美的意味があります。


高台の種類

特徴

向いている器

切高台(きりこうだい)

側面がまっすぐカットされたような形。すっきりとした印象。

現代的な飯碗、小鉢

削高台(けずりこうだい)

ろくろや手作業で削り出されたような自然な形。

民芸調の茶碗や湯呑み

蛇の目高台(じゃのめこうだい)

内側に円形の跡が残る。ろくろ跡の名残。

抹茶碗、和風茶碗

糸底(いとぞこ)

高台が非常に低く、糸を引いたような浅い底。

重ねやすい器、日常使い

足付き

高台が高く脚のような形。

茶道具、供物用器

切り高台(切り込みあり)

高台にわざと欠けたような部分をつけたもの。

茶道の「侘び」を表現

高台のデザインや加工には、焼き物の流派や作家の個性が表れます。唐津焼では荒削りの高台が味わいとして評価され、萩焼では柔らかく丸みを帯びた高台が好まれます。


高台から読み取る器の魅力

高台は器の裏側にある見えにくい場所ですが、日本の器文化では見えにくい場所にも心を込めます。裏面の高台が丁寧に整えられていれば、その器がどれだけ丁寧に作られたかがわかるという見方もあります。


また、茶道では「見込み(茶碗の内側)」だけでなく、「高台」も鑑賞の対象となります。茶碗を裏返して高台をじっくりと眺めることも一興です。


まとめ

茶碗の高台は、持ちやすさ、安定感、見た目の美しさ、制作上の必然性、すべてを兼ね備えた、まさに用の美の象徴と言える存在です。器を選ぶとき高台に目を向けてみると、器の作り手のこだわりや背景が見えてくるかもしれません。


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