漆器と一口に言っても、越前漆器や京漆器など、さまざまな種類があってどう違うのか区別がつきませんよね。 漆器が欲しいけど何を選んでいいのかわからないという方に、今回は、全国の伝統的な漆器の種類などを解説します。
全国の漆器の種類と特徴
漆器の製法は全国各地でさまざまに発展してきました。都道府県の数だけ種類があるといってもいいくらい、地域によっていろいろな加工の方法があります。全国の漆器の特徴を紹介します。
越前漆器
越前漆器は、日本の漆産業を代表する漆器です。越前の鯖江市を本拠地としています。鯖江市は、日本の伝統的なメガネ産業なども有名で、職人の街として近年大注目されている街です。
漆器においても、優れた技術は言うまでもなく、特に上品で華やかな仕上がりから、お祝い事や婚礼など、晴れの舞台で活躍する漆器が多く作られています。祝儀用の調度品から日常生活で使用する食器類など、幅広く制作され、外食産業や業務用で使用されている80%の漆器も、越前漆器が用いられています。
京漆器
京漆器の特徴は、「お茶」の文化とともに発展してきたという歴史を持ち、茶道具が多いことです。
お茶の文化ではわび、さびを重んじることから、漆器自体の美しさもけばけばしさがなく質素でありながら深い味わいがあるものが多いのが特徴です。器自体は薄く、その分漆の割合が増えますのでコストが高いという面があります。
輪島塗
有名な輪島塗では、「輪島地」という地元の「土」を混ぜ合わせるのが最大の特徴です。100を越える工程を通し、頑丈な漆器を生み出します。「輪島地」を下地に配分することで、強度が増し、見た目の美しさにも影響が出てきます。また、修復がしやすいのも輪島塗の特徴の一つです。
木曽漆器
木曽と言えば「ひのき」を思い浮かべるほど良質な材木が豊富で木工の盛んな地域です。漆器の特徴も、質の高いひのき、かつら、とちの木などの木地を用いていることがあげられます。
木曽漆器には「塗り」の方法にも種類があり、生漆を塗り重ねて木目を生かす「木曽春慶」や、漆を含んだタンポで模様をつける「木曽堆朱」、色漆を幾何学模様に塗り分ける「塗分呂色塗」などがあります。
大内塗
大内塗は山口県の技法です。室町時代に権勢をふるった「大内氏」が名前の由来で、大内氏の家紋があしらってあります。
漆を何度も塗り重ねるため、頑丈で色褪せもほとんどせず、色漆を塗り分けて萩などを描いてあることも大きな特徴です。また、大内人形というひな人形にも漆が使われており、おみやげとして売られています。
鎌倉彫
鎌倉彫は、仏像や仏具を彫刻する「仏師」が、中国から輸出されてくる工芸品に影響を受け、カツラやイチョウに独自の彫刻を施したものが起源です。
漆は朱色のモノが塗られ、漆に墨を巻き付けることで陰影を表す手法は見事なものです。彫刻自体も複雑なのが特徴で、美術品としても非常に価値の高いのが特徴です。
本漆が一番!漆の種類とそれぞれの特徴は?
現在では本物の「漆」だけを用いる「本漆」だけではなく、「合成漆」「カシュー塗り」「ウレタン塗り」など、漆にほかのモノを混ぜてあるものが出てています。「安価で漆の良さを楽しむ」ための工夫ではありますが、やはり美しさも耐久性も「本漆」に勝るものはもちろんありません。
本漆は、漆の「一度固まると溶けることがない」という性質上、非常に頑丈です。 また、防腐、防カビ、防虫、防菌、防水、絶縁などの働きがあり、長持ちするのも大きな特徴です。硬化が進めば透明度が増すため、経年によって光沢が増します。こうした性質は「漆」の大きな利点です。
合成漆、ウレタン塗り
合成漆やウレタン塗りでは、人工の溶剤が混ぜられています。 そのため、漆の特徴である「時間がたてば光沢が増す」という利点が失われてしまいます。
カシュー塗り
カシュー塗りは、本漆同様に経年とともに光沢が増すという利点がありますが、本漆のような頑丈さは失われます。
まずは汁碗から!おすすめの一品は本漆の汁碗!
皆様の中には、100円ショップで購入した汁椀でお味噌汁を飲もうとしたら、熱くて器が持てなかったという経験をされている人もたくさんいるのではないでしょうか。器が持てないと、お吸い物やお味噌汁は食べにくくてしょうがないですよね。
漆には、「耐熱」の効果もあり、漆の器でお味噌汁を飲めば、熱くて器が持てないなどということはあり得ません。
まとめ
漆は日本の伝統工芸であり、全国でさまざまに発展してきました。今回ご紹介できなかった地域でも、まだまだたくさんの種類が存在しています。
高価なものなので安易に使用できないと思われがちですが、実は普段使いしてこそ「漆」の本領は発揮されます。まず「本漆」の「茶碗」から試していただければと思います。
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