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漆塗りの工程をご紹介!土台作りと基本の塗り方の流れ




「漆を塗る」と一言でいえば漆塗りも簡単に思えますが、ただ漆を塗るだけでは綺麗には塗ることができません。複数の工程や職人の技法により、高級感溢れる漆器になります。 漆器ができるまでの土台づくりの流れと漆塗りの工程を紹介します。


木地作り

まず漆を塗る前に、木地を整える必要があります。土台となる木地がしっかりしていないと綺麗に塗れず、漆が馴染みませんので疎かにできない工程です。


木地固め

土台となる木地を丈夫に固定します。ウルシノキの樹液をろ過した生漆を、器全体に塗ります。その後、生漆が乾いたら表面を滑らかにするため、サンドペーパーなどで綺麗に磨きます。


布着せ

木地固めが終わったら、強度の弱い場所(縁など)に麻布を糊漆で貼り付け補強します。 貼り付けた後は、木地作りと同じようにサンドペーパーなどで磨き上げます。


麻布は布目に隙間がありますので、切り粉錆などで隙間を埋めます。凸の部分は削り、凹の部分は埋めて、布着せした部分を平坦にします。


絶対に必要な作業ではありませんが、輪島塗のように丈夫な漆器を作るのなら必要な工程と言えるでしょう。


下地塗り

土台が完成したら、次は下地作りです。下地は一種類だけではなく、何種類もの地付けを行っていきます。


地付け

まずは、生漆と地の粉と呼ばれる下地材を混ぜ合わせ、下地材をヘラで塗っていきます。塗り終わったら乾燥後、同じように平らに磨きますが、下地材は丈夫ですので砥石で磨きましょう。


一回でも問題がないかもしれませんが、丈夫にするためにも3回ほどは行った方が良いです。石川県の伝統漆塗りである「輪島塗」は地付けを複数回行うことで強度を上げ、丈夫で長持ちするようにしています。


切り粉地付け

次は、地の粉と砥ぎの粉と生漆を混ぜた「切り粉錆」を、地付けと同じように塗っていきます。乾燥したら同じように研磨し、可能なら同じように3回ほど繰り返します。


錆び付け

最後の地付けは、砥ぎの粉と生漆を混ぜた「錆漆」を地付けと同じように塗っていきます。乾燥したら同じように研磨し、可能なら同じように3回ほど繰り返します。

また、最後の仕上げになりますので、使用する砥ぎの粉は回数を増やすごとに細かな粉にして、下地を滑らかにしていきます。


これで、下地作りは完成です。


漆塗り

土台作りと下地塗りが終わったら、いよいよ漆塗りを行います。綺麗に塗る為には一回で終わりではなく、下塗り・中塗り・上塗りと順に塗る作業を行います。


下塗り

下塗りでは油分の無い中塗漆を使用して塗っていきます。黒く漆器を仕上げる際は主に黒中漆を使用しますが、朱や緑などの色漆で仕上げる際は透中漆を使用します。

塗り終わったら乾燥させ、余分な凹凸を無くすために炭で水研ぎをしたり、錆漆で凹みを埋めます。


中塗り

中塗りも下塗りとほとんど同じです。油分の無い中塗漆で全体を塗った後、水研ぎや砥石で磨き、錆漆で凹みを埋めます。ただし、上塗りがよくなじむよう、砥石などの目は細かくして、下塗りよりも滑らかな仕上がりにします。


上塗り

最後に上塗りをして仕上げます。上塗りで最後の塗りが終わりますので、ゴミなどの不純物や刷毛跡などが残らないように注意しながら作業を行います。

蝋色漆や黒呂色漆などの上塗り用の漆を全体に塗っていき、乾燥させたら目の細かな砥石で、表面を滑らかにするほか、必要なら摺り漆を使用して細かな凹みも埋めます。


上塗りまで終わったら、漆塗りは一旦は終わりです。


・蝋色塗り・黒呂色塗り 漆器として上塗りまで終わったら使用できますが、光沢や手触りを良くするため、 蝋色塗りや黒呂色漆も行います。菜種油で溶いた磨き粉を用いて磨いきます。何度も磨くことで油が染み渡り、蝋で磨いたかのようなツルツルした綺麗な光沢ができます。


漆器の持つ光沢と滑らかさが出れば、ついに漆塗りは完成です。


漆は修復にも使える

漆は漆器を仕上げるだけではなく、漆器を修復する金継ぎとしても利用することが可能です。


修復方法は簡単で、漆を接着剤の代わりとして割れた部分に塗るだけです。後は、丁寧に合わせて乾燥させ、余分な漆を研磨し綺麗にすれば、漆器の割れや欠けを直すことができます


ただし、漆でつないだ継ぎ目が消えるわけではありません。そのため、継ぎ目を金粉などで装飾し、蒔絵のように仕上げます。

特に、工程ごとに専門の職人がいる輪島塗では修復もよく行われています。


まとめ

ただ単純に漆を塗るといっても様々な工程があるります。 ですが、本格的な漆塗りでなければすべて行う必要はありません。最低でも下・中・上塗りさえできれば問題はないでしょう。是非漆塗りに挑戦し、自作の漆器を揃えてみてはいかがですか?

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