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漆には色が付いていない!?顔料で様々な色ができる


漆器などに使用される漆の多くは「黒」や「朱色」が多いですが、それ以外にも漆器には様々な色があります。黒や朱以外に、どのような漆の色があるのでしょうか?漆に色を付ける方法、色の種類を紹介します。


漆は透明な色

実は、元々漆には色が付いていません。うるしの木の樹液をろ過した物が漆の原料になります。

この樹液をろ過したものを生漆といい、生漆から余分な水分を飛ばすなどして精製することで、透明な色の「透漆(すきうるし)」が完成します。


漆に色をつける方法

透漆は防虫・防腐効果があり、そのまま漆として使用することができますが、透漆は透明ですので、漆の特徴である光沢を付けることができません。


透漆を精製する段階で鉄粉を加え、鉄粉の酸化作用によって透漆を黒くし、塗ることで黒光りが出るようにします。つまり、漆が黒いのは鉄粉を顔料として加えているからであり、漆自体が黒いわけではないです。


光沢や漆器との相性などの問題もありますが、顔料さえ変えれば漆は黒色の他にも、色はいくらでも増やすことができます。


漆の色の種類

近年、技術の発展により漆の色は増えつつあります。ブルーやピンク、緑などの色もありますが、漆器でよく用いられる色をいくつか紹介します。


黒漆

漆器としてよく見かける黒色の漆です。深みのある黒い色合いは、漆器を重厚で落ち着いた作りにしてくれるでしょう。また、漆の精製の際に油分を加えることによって黒光りするようにもできます。黒光りすることでより高級感を増すことができます。


真っ黒な色を表す「漆黒」は、黒漆から名付けられたそうです。


赤い色が特徴的な赤色の漆です。生漆や透漆に紅や朱丹などの赤い顔料を加えることで赤く染めます。黒漆の重厚さとは違い、鮮やかで気品のある漆器に仕立て上げることができます。


朱の他にも「本朱」や「真朱」と呼ばれることもあります。銀朱や古代朱、洗朱など、他にも朱(赤)色があるため、間違えないよう基本となる朱に「本」や「真」を付けています。


銀朱

黄色がかった赤色のことです。朱丹の他にも、水銀や硫黄などを加えて加熱することで銀朱になります。朱よりも朱色に近い色合いで、より明るい赤に仕立てます。銀朱は墳墓の内装や葬祭などに使用されており、血のような色合いから生命の再生を願って使われていたそうです。


古代朱

茶色がかった赤色のことです。艶消しを行ってある渋めの朱色で、朱色の中でも暗く落ち着きのある仕上がりになります。色が主張しませんので、他の色合いとも合わせやすい色です。


洗朱

銀朱と同じく黄色がかった赤色のことです。「朱を洗って薄めた色合い」であるため、銀朱よりも薄い朱色になります。朱色よりも橙色やオレンジ色に近い色合いで、朱色の中でも特に明るく仕上げます。


うるみ

黒味がかった落ち着いた朱色のことです。

赤口漆に黒漆を入れたり、飴色の透明な朱合漆に赤口の顔料を加えたりして色を作ります。


白漆

白漆は、真っ白な色を想像する方が多いと思いますが、ベージュ色をしています。ベースとなる生漆は透明な茶色なので、温もりのある色合いになります。


塗り方によって作られる色

漆器に塗られる色は、塗装技法で様々な色合いができます。漆の塗り方によって作られる色、技法を紹介します。


溜色

溜色とは、下地の上に透漆を塗るって淡く見せる色のことです。透明な漆を上地として塗るため色が変わるわけではありませんが、透漆越しで見ることで下地がボケて、下地を淡く見せることができます。

「小豆色」や「濃褐色」などが有名ですが、下地を変えれば色合いも変えることができます。


曙は、黒と朱を合わせた塗り方の一つです。朱色を下地で塗った上に黒色の漆を塗ります。そして、部分的に磨くことで上地である黒色が剥げて、下地の朱色が出てくるようにするのです。


黒の合間に朱色が見える様子が独特の趣を出し、使い続けることで黒字が剥げてより複雑な色合いに仕上げてくれます。


根来

根来は、曙とは逆の黒と朱を合わせた塗り方の一つです。曙では下地が朱で上地が黒でしたが、根来では下地が黒で上地が朱になります。曙と同じように独特な模様になる他、使い続けることでより味わい深い漆器になるでしょう。


摺漆

摺漆とは、生漆を薄く摺りこんで塗る技法の一つです。透明な生漆を薄く摺りこむことで木目をしっかりと見せることができます。簡単に言うと、ニスやオイルワックスのようなイメージです。


黒漆のような色合いや高級感は出ませんが、木目があることで木の温かさを感じやすくなるでしょう。生漆は透明ですので正確には色ではありませんが、木目を生かした色合いといえます。


木地呂

木地呂とは、透漆を塗り最後に磨き上げる技法の一つです。 摺漆と同じように透明な透漆を塗りますが、木地呂は、下塗・中塗・上塗と3回塗った後に磨いて木目を出します。手間がかかりますが、その分丈夫で、長く愛用することができるでしょう。


また、透漆だけではなく、朱や黄色などの木目を邪魔しない色で塗装する場合もあるそうです。木目を残したまま、色鮮やかな漆器を楽しむことができます。


現在の漆の色

漆の色は、「生漆に顔料をただ混ぜればできる」ということではありません。全く同じ色を作ろうとしても季節や天候、顔料の量や成分などの条件で色合いが変わることがあります。

技術が発達していない時代は、職人も色漆を作るのにとても苦労していたようです。


近年、顔料の進化でカラフルな色が増え、特に沈金や蒔絵の加飾で多様な表現ができるようになりました。現在、漆で表現するのが難しい色は、合成塗料でよりたくさんの色が表現できるようになりました。


まとめ

日本の漆器でよく使われている漆の色を紹介しました。漆器を使っているうちに味わい深い色合いになり艶もでてきます。変化する色合いを楽しみながら漆器を使ってみてください。

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