昔からある漆器ですが、近年では合成漆器という物も商品で見かけるようになっています。
一見するとどちらも漆を使った商品ですが、昔から使われてきている木の漆器とは何が違うのでしょうか?合成漆器の特徴や天然漆器との違いなどを紹介します。
合成漆器とは
合成漆器とは、原料にプラスチックを使用した漆器の事です。
昔ながらの工程では、天然木材を土台(木地)とし、天然木材の上から漆でコーティングします。ですが、合成漆器では、天然木材の代わりにプラスチックで土台(器)を作り、それに漆でコーティングします。
また、漆も天然のウルシノキの樹液から精製した物ではなく、ウレタン塗装やカシュー塗装のように合成塗料を使用している場合も、合成漆器と商品に表記されることもあります。
合成漆器の作り方
合成漆器はいわゆる「量産品」です。すべての工程を職人の手によって行う天然漆器とは違い、成形は型に合成樹脂を流し入れて作られます。
また、漆の塗装はエアスプレーによる均等な塗装、コンピューターデザインによって印刷される蒔絵など、すべてが機械化することができます。機械化によって、職人の技術が必要なく漆器を作ることができるようになり、同時に、コストや人件費を節約し、安く漆器を商品化することができるようになりました。
他にも、型を変えることで好きな形にしたり、好きなデザインを印刷することができたりなど、自由な漆器を作ることができます。合成漆器は、量産品ではありますが劣化品というわけではなく、職人がしない・できないこともすることができる、普及しやすい漆器です。
合成漆器のメリット
「合成漆器は天然漆器の劣化品」と思うかもしれませんが、合成漆器だからこそのメリットもあります。合成漆器のメリットをまとめました。
安価で購入できる
天然の木材や漆は、入手や扱いが難しいのでどうしても漆器は値段が高くなってしまいます。ですが、プラスチックなどの合成樹脂なら製造や扱いも簡単になり、コストを安く抑えられます。
他にも、職人の手によって作られる天然漆器より、 機械化されて製造されている合成漆器の方がコストを抑えられます。服や陶器など漆器に限ったことではありませんが、合成樹脂や化学繊維で作られている物は、総じて安価だと言えるでしょう。
使用の制限がない
天然の漆器を使用する際は注意することが色々とあります。熱や紫外線によって漆が変色してしまう為電子レンジでの加熱は厳禁だったり、冷蔵庫で冷やすと器が乾燥して割れや変形を起こしたりなど、扱いには注意が必要です。
しかし、合成漆器ならそのような心配はありません。タッパーなどと同じ合成樹脂で作られているので、熱や冷気によって合成漆器が劣化する心配がないのです。漆器でありながら、他の皿や器と同じように使うことができます。
天然漆器のメリット
合成漆器の方が安くて扱いやすいですが、断然漆器の方が保温性や断熱性が高い、修繕がしやすいなど良い場面もあります。
保温性と断熱性が高い
土台が木地であることで、中の温度が外に伝わりにくくなります。雑煮や汁物など、漆器の器に熱い料理を入れることは多いと思います。
熱を通しにくい木材なら器が熱くなる心配はなく、手で持ちやすくなります。器に口を付けても飲みやすくなるので、汁物には特におすすめです。
修繕がしやすい
天然漆器は職人の手によって作られていますので、割れたり欠けてしまっても修理することができます。
合成漆器が割れてしまっても「また購入すればいい」と思うかもしれませんが、修理する事で愛着が持てます。長く使うほど艶も出てきて、味わい深い天然漆器となります。
天然漆器と合成漆器の見分け方
もし、購入した商品が天然漆器か合成漆器かを気になる場合は、水に沈めてみるといいです。合成樹脂より木材の方が比重は軽いため、天然漆器の方は水に浮きます。水に沈んだままなら合成漆器ということです。
また、木材の方が密度が薄く軽いですので、指ではじいたり物で叩くと軽い音がします。逆に密度のある合成樹脂では、硬く鈍い音がします。
他にも、合成樹脂の方が型にはめて作れることで椀の底を薄くできたり、冷蔵庫で冷やした後に息を吹きかけると温度差によって木目が見えたりなど、色々と見分ける方法があります。
商品の説明書きなどに「合成漆器」などと記載されていることが多いですが、気になる人は試してみてはどうでしょうか?天然漆器か合成漆器かがわかれば、「天然漆器を電子レンジで加熱」などの失敗を無くすことができます。
まとめ
弁当箱や時計など、天然漆器では見られない様々な物に合成漆器は使われています。合成漆器と聞くと「安物」というイメージを持つ人もいると思いますが、合成漆器だからこそのメリットもあります。自分の生活スタイルに合わせて合成漆器や天然漆器を上手く使い分けましょう。
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